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三菱一号館美術館 公式ブログ 当館のイベントの様子や出来事をお知らせしていきます。

2017年5月3日

<歴史資料室で個展開催中!「アートアワードトーキョー丸の内2016」で三菱地所賞を受賞した吉田桃子さんインタビュー③>

皆さま、こんにちは。
前回に引き続き、三菱一号館 歴史資料室で開催中の、「アートアワードトーキョー丸の内2016」三菱地所賞受賞者、吉田桃子さんの個展「scene UKH ver.3」について、吉田さんご本人にお話をお伺いしました。今回が最終回です。
(聞き手:三菱一号館美術館 学芸グループ長 野口玲一)

―続いて、作品の印象についてお話を伺いたいと思います。作品の青みがかった色調が独特なのですが、それは映像の色味からくるのでしょうか。

映像を撮って、その動画のワンシーンから見ているので、やはり動画的な色味ではあると思います。動画を撮るときの光の感じなど、その時は意識していないですが、私の好みだと思います。私が描いている漫画は自分に近いので、とてもかっこ悪いものだと思っていて、それを絵にするときにはクールにしたい、カッコよくしたいという願望があります。
ドライに、あるいはクールにしたいという願望から、撮影の段階で青い光を当てることもあります。

―作品の仕上げに対してもこだわりを感じます。
絵具が滴っていたり、キャンバスの端が丸められていたり、木枠に張らないでスクリーンのように見せたりしているのは、あえて作品を完成させたくないというような意味があるのでしょうか。

そうですね。木枠に張ると、ちゃんと描かれたというイメージが強くなると思います。もちろん作品はしっかりと描いてはいるのですが。
私が見せたいのは、どちらかというと頭の中のワンシーンが、一瞬でパッと焼き付けられているような、そんな状態なのです。そんな軽やかさに加えて、ドライにしたい、作家性というものをあまり表に出したくないと思っています。そう考えて「転写」という手法を思い描いています。実際には直接に描いているのでは転写ではないのですが。
キャンバスを、転写された下地であると捉えて、そこに何かを置いて転写したらすぐに作品が出来るというようにイメージしています。キャンバスの隙間が開いているのも、「転写するときに雑においたので、隙間が出来てしまった」という感じに見せたいのです。隙間が空いていたり、丸まっていたりするのは、キャンバスに描かれたものというより、単なる下地であるように見せるための工夫です。かつて、キャンバスをきちんと同じサイズの板に貼っていた時期もあったのですが、それは、今のところ自分の意図しているものと違うという感じがしています。

―映像が元になっているので、スクリーンを思い描いたのですが、それよりもっと軽く見せたいということのようですね。キャンバスの大きさに加えて、ラフな展示をされているので、最初に見たときには驚きましたが、そこに説得力が感じられて、とても面白かったです。

―当館の歴史資料室は歴史を感じさせる建物で、ホワイトキューブでなかったり、家具が置かれていたり、これまで展示されてきた空間とは趣きが異なっていたかと思います。その点について感想があれば、聞かせてください。

私の作品には、コンクリートの壁が合うなと思っていたので、正直なところ少し展示しにくかったです。ただし作品がどんな場所にも合うということは大事なことで、とても良い経験になりました。この展示スペースと私の作品がマッチしているかといえば、必ずしもそうとは言えないかもしれませんが、今では良かったかなと自分では感じています。

―こちらも実は不安なところがあったのですが、完成してみると、何といえばよいのか、逆にきちっと仕上げないことによって、空間が生き生きとしてくるという感じを受けました。たった今吉田さんがやってきて、作品を置いて、ぱっといなくなってしまった、というような。建物はオーセンティックな雰囲気ですが、風通しがよくなっているようで、それはとても面白かったです。

ありがとうございます。今回の展示は良い経験になりました。搬入からちゃんと見て、展示もして、あの作品がどのように見えるのかというのは、自分の中で消化していきたいなと思っています。

―最後になりますが、こんな作品を作ってみたい、展示をしてみたいという今後の希望があれば教えてください。

ずっと立体に興味があって、作ってみたいと思っています。ただし立体については、自分の中で良し悪しの基準がないので、どうやって完成させたらよいか分からず困っています。
展示ケースの中のOHPフィルムの作品が、立体のためのドローイングです。立体制作のために金具をいくつか集めたのですが、溶接の技術がないので、画像に撮ってパソコンで組んでいきました。この方法から始めて、いずれ大きな実物を作って展示してみたいと思っています。

―制作の元になった映像の登場人物にアーティストがいて、彼が立体を制作するという設定で、ドローイングはその立体を描いたものだそうですね。立体が実現したら観てみたいですね。

そうですね、それと絵を組み合わせてみたら、どう見えるのかという事も今後やってみたい展示です。
それには大きさが必要で、しっかりと作らないとかっこよくならないと思います。もっと大きな空間で、天井が高い場所で展示出来たら、大きなサイズの立体を展示してみたいです。

―自分のアイデアを形にするというのは、いろいろなプロセスやスキルが必要になるということなんですね。

時間はかかるとは思いますが、自分のアイデアを形にするスキルも身に着けられるように少しずつ頑張っていきたいと思います。

―いろいろお話頂きまして、有難うございました。

<吉田桃子さんからのお知らせ>
京都にあるアートゾーンにて5月12〜14の三日間、個展形式で展示が開催されます!
ARTZONE
◆吉田桃子さん作品については、こちらをご覧ください。

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<歴史資料室で個展開催中!「アートアワードトーキョー丸の内2016」で三菱地所賞を受賞した吉田桃子さんインタビュー③>

皆さま、こんにちは。
前回に引き続き、三菱一号館 歴史資料室で開催中の、「アートアワードトーキョー丸の内2016」三菱地所賞受賞者、吉田桃子さんの個展「scene UKH ver.3」について、吉田さんご本人にお話をお伺いしました。今回が最終回です。
(聞き手:三菱一号館美術館 学芸グループ長 野口玲一)

―続いて、作品の印象についてお話を伺いたいと思います。作品の青みがかった色調が独特なのですが、それは映像の色味からくるのでしょうか。

映像を撮って、その動画のワンシーンから見ているので、やはり動画的な色味ではあると思います。動画を撮るときの光の感じなど、その時は意識していないですが、私の好みだと思います。私が描いている漫画は自分に近いので、とてもかっこ悪いものだと思っていて、それを絵にするときにはクールにしたい、カッコよくしたいという願望があります。
ドライに、あるいはクールにしたいという願望から、撮影の段階で青い光を当てることもあります。

―作品の仕上げに対してもこだわりを感じます。
絵具が滴っていたり、キャンバスの端が丸められていたり、木枠に張らないでスクリーンのように見せたりしているのは、あえて作品を完成させたくないというような意味があるのでしょうか。

そうですね。木枠に張ると、ちゃんと描かれたというイメージが強くなると思います。もちろん作品はしっかりと描いてはいるのですが。
私が見せたいのは、どちらかというと頭の中のワンシーンが、一瞬でパッと焼き付けられているような、そんな状態なのです。そんな軽やかさに加えて、ドライにしたい、作家性というものをあまり表に出したくないと思っています。そう考えて「転写」という手法を思い描いています。実際には直接に描いているのでは転写ではないのですが。
キャンバスを、転写された下地であると捉えて、そこに何かを置いて転写したらすぐに作品が出来るというようにイメージしています。キャンバスの隙間が開いているのも、「転写するときに雑においたので、隙間が出来てしまった」という感じに見せたいのです。隙間が空いていたり、丸まっていたりするのは、キャンバスに描かれたものというより、単なる下地であるように見せるための工夫です。かつて、キャンバスをきちんと同じサイズの板に貼っていた時期もあったのですが、それは、今のところ自分の意図しているものと違うという感じがしています。

―映像が元になっているので、スクリーンを思い描いたのですが、それよりもっと軽く見せたいということのようですね。キャンバスの大きさに加えて、ラフな展示をされているので、最初に見たときには驚きましたが、そこに説得力が感じられて、とても面白かったです。

―当館の歴史資料室は歴史を感じさせる建物で、ホワイトキューブでなかったり、家具が置かれていたり、これまで展示されてきた空間とは趣きが異なっていたかと思います。その点について感想があれば、聞かせてください。

私の作品には、コンクリートの壁が合うなと思っていたので、正直なところ少し展示しにくかったです。ただし作品がどんな場所にも合うということは大事なことで、とても良い経験になりました。この展示スペースと私の作品がマッチしているかといえば、必ずしもそうとは言えないかもしれませんが、今では良かったかなと自分では感じています。

―こちらも実は不安なところがあったのですが、完成してみると、何といえばよいのか、逆にきちっと仕上げないことによって、空間が生き生きとしてくるという感じを受けました。たった今吉田さんがやってきて、作品を置いて、ぱっといなくなってしまった、というような。建物はオーセンティックな雰囲気ですが、風通しがよくなっているようで、それはとても面白かったです。

ありがとうございます。今回の展示は良い経験になりました。搬入からちゃんと見て、展示もして、あの作品がどのように見えるのかというのは、自分の中で消化していきたいなと思っています。

―最後になりますが、こんな作品を作ってみたい、展示をしてみたいという今後の希望があれば教えてください。

ずっと立体に興味があって、作ってみたいと思っています。ただし立体については、自分の中で良し悪しの基準がないので、どうやって完成させたらよいか分からず困っています。
展示ケースの中のOHPフィルムの作品が、立体のためのドローイングです。立体制作のために金具をいくつか集めたのですが、溶接の技術がないので、画像に撮ってパソコンで組んでいきました。この方法から始めて、いずれ大きな実物を作って展示してみたいと思っています。

―制作の元になった映像の登場人物にアーティストがいて、彼が立体を制作するという設定で、ドローイングはその立体を描いたものだそうですね。立体が実現したら観てみたいですね。

そうですね、それと絵を組み合わせてみたら、どう見えるのかという事も今後やってみたい展示です。
それには大きさが必要で、しっかりと作らないとかっこよくならないと思います。もっと大きな空間で、天井が高い場所で展示出来たら、大きなサイズの立体を展示してみたいです。

―自分のアイデアを形にするというのは、いろいろなプロセスやスキルが必要になるということなんですね。

時間はかかるとは思いますが、自分のアイデアを形にするスキルも身に着けられるように少しずつ頑張っていきたいと思います。

―いろいろお話頂きまして、有難うございました。

<吉田桃子さんからのお知らせ>
京都にあるアートゾーンにて5月12〜14の三日間、個展形式で展示が開催されます!
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◆吉田桃子さん作品については、こちらをご覧ください。

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