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三菱一号館美術館 公式ブログ 当館のイベントの様子や出来事をお知らせしていきます。

2020年9月16日

「画家が見たこども展」をファッションで見てみたら2.おとなのファッション

前回の「こどものファッション」に続き、今回はおとな版をお届けしましょう。

Photo : Hayato Wakabayashi

19世紀末から20世紀前半のフランスの人々が身に着けていた服は、現代とはずいぶん異なります。特に女性の服装は100年余りで大幅に変化しました。現代のパリでは、夏になると水着のような、露出の多い服装も目にします。最近は日本もそうかもしれませんね。またフランスでは何十年も前から、会社に出社する際、ストッキングを履く女性は稀でした。一方当時の日本では、どんなに暑い夏の日でもストッキングを履かないということはマナー違反とされていました。最近は、制服のある職場などを除くと、状況はだいぶ変化してきているようです。ファッションは何十年かの期間で相当に変わるものなのです。

さて、今から120年ほど前、19世紀末・パリの街を覗いてみましょう。三菱一号館美術館が所蔵するこのピエール・ボナールの版画には、様々な階層の男女が描かれています。女性たちはそろって地面につきそうな長いスカートを身につけています。この時代の女性のドレスには、膝丈も、ミモレ丈もありませんでした。スカートは床につくか、それより長くなければなりませんでした。


ピエール・ボナール《街角(パリ生活の小景)》1899年 リトグラフ・紙 三菱一号館美術館蔵

この作品に描かれているドレスは、外出着です。具体的にはこの写真のような服装です。

ウォルト店 ドレス 1888年 フランス メトロポリタン美術館蔵

19世紀は中産階級が勃興し、都会に暮らす女性が買い物など、生活の楽しみのために外出することが増え、歩きやすい服装が求められるようになります。シャルル・フレデリック・ウォルトをはじめとするスターデザイナーが現れ、彼らは外出する女性たちのために、裾を引きずらないドレスもデザインしました。ただ、ボナールの版画では、女性たちのドレスは地面を引きずるくらい長く、スカートを引き上げて歩いているようですね。左手の子どもを連れた女性は、履いたヒールの靴まで見えています。

この時代におけるファッションのもうひとつの特徴は帽子の着用です。女性の髪の毛は長く、結い上げてあり、帽子を被っていました。それは下の階層の人々も同じです。農作業中の農民であっても、民族衣装の帽子(飾り)を付けていました。ところで、ボナールの版画に描かれた女性たちの帽子は、ふわふわと大きく、随分華やかです。実際にはこんなふうなものでした。

イブニング・ボネ 1880年頃
恐らくフランス メトロポリタン美術館蔵

写真のボネには本物の鳥が付けられています、このボネのように、19世紀末には、本物の鳥を載せている帽子が大流行し、鳥の乱獲が問題になったほどでした。それから100年ほど経った現在は、オートクチュールですらも毛皮のコートを使わなくなってきていますから、ファッションは変わるものです。

Photo : Hayato Wakabayashi

ナビ派の画家たちは日本の美術品、工芸品に影響を受け、その作品は、大胆で平面的な構図、限られた色彩が特徴とされていますが、そこに描かれたファッションに着目すると、また違った面が見えてきます。「画家が見たこども展」は、フランスに赴いてもなかなか見られない、個人蔵のめずらしい作品が満載です。本展は9月22日までです。閉幕前に、会場で、ファッションにも注目して展覧会を楽しんでみてください!

Photo : Hayato Wakabayashi

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「画家が見たこども展」をファッションで見てみたら2.おとなのファッション

前回の「こどものファッション」に続き、今回はおとな版をお届けしましょう。

Photo : Hayato Wakabayashi

19世紀末から20世紀前半のフランスの人々が身に着けていた服は、現代とはずいぶん異なります。特に女性の服装は100年余りで大幅に変化しました。現代のパリでは、夏になると水着のような、露出の多い服装も目にします。最近は日本もそうかもしれませんね。またフランスでは何十年も前から、会社に出社する際、ストッキングを履く女性は稀でした。一方当時の日本では、どんなに暑い夏の日でもストッキングを履かないということはマナー違反とされていました。最近は、制服のある職場などを除くと、状況はだいぶ変化してきているようです。ファッションは何十年かの期間で相当に変わるものなのです。

さて、今から120年ほど前、19世紀末・パリの街を覗いてみましょう。三菱一号館美術館が所蔵するこのピエール・ボナールの版画には、様々な階層の男女が描かれています。女性たちはそろって地面につきそうな長いスカートを身につけています。この時代の女性のドレスには、膝丈も、ミモレ丈もありませんでした。スカートは床につくか、それより長くなければなりませんでした。


ピエール・ボナール《街角(パリ生活の小景)》1899年 リトグラフ・紙 三菱一号館美術館蔵

この作品に描かれているドレスは、外出着です。具体的にはこの写真のような服装です。

ウォルト店 ドレス 1888年 フランス メトロポリタン美術館蔵

19世紀は中産階級が勃興し、都会に暮らす女性が買い物など、生活の楽しみのために外出することが増え、歩きやすい服装が求められるようになります。シャルル・フレデリック・ウォルトをはじめとするスターデザイナーが現れ、彼らは外出する女性たちのために、裾を引きずらないドレスもデザインしました。ただ、ボナールの版画では、女性たちのドレスは地面を引きずるくらい長く、スカートを引き上げて歩いているようですね。左手の子どもを連れた女性は、履いたヒールの靴まで見えています。

この時代におけるファッションのもうひとつの特徴は帽子の着用です。女性の髪の毛は長く、結い上げてあり、帽子を被っていました。それは下の階層の人々も同じです。農作業中の農民であっても、民族衣装の帽子(飾り)を付けていました。ところで、ボナールの版画に描かれた女性たちの帽子は、ふわふわと大きく、随分華やかです。実際にはこんなふうなものでした。

イブニング・ボネ 1880年頃
恐らくフランス メトロポリタン美術館蔵

写真のボネには本物の鳥が付けられています、このボネのように、19世紀末には、本物の鳥を載せている帽子が大流行し、鳥の乱獲が問題になったほどでした。それから100年ほど経った現在は、オートクチュールですらも毛皮のコートを使わなくなってきていますから、ファッションは変わるものです。

Photo : Hayato Wakabayashi

ナビ派の画家たちは日本の美術品、工芸品に影響を受け、その作品は、大胆で平面的な構図、限られた色彩が特徴とされていますが、そこに描かれたファッションに着目すると、また違った面が見えてきます。「画家が見たこども展」は、フランスに赴いてもなかなか見られない、個人蔵のめずらしい作品が満載です。本展は9月22日までです。閉幕前に、会場で、ファッションにも注目して展覧会を楽しんでみてください!

Photo : Hayato Wakabayashi

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